「Bに相続させる」旨の遺言、そのBさんが先に亡くなっていたら(最判平成23年2月22日)
     こんにちは。弁護士の村上匠です。
     平成23年2月22日の最高裁判決で、実務に影響を与えるであろう新判例が出ました。

    h230222.jpg
    (↑ クリックすると相続関係図が出ます。分かりやすく一部簡略化しています)

     「Bさんに相続させる」という内容の遺言を残したはいいものの、そのBさんが先に亡くなった場合、遺言の効力がどうなるかという問題がありました。今回の判決は、この問題に決着をつけたものです。

     このような事案では、「特段の事情のない限り」、その遺言は無効とされるとの判決が下されました。そして、例外となる「特段の事情」は何かというと、

    >当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,
    (上記判例より引用)

     つまり、上の図でいえば、「Bが先に亡くなっていたら、被相続人AにはYらに相続させる意思があった」と見るべき事情が、遺言の条項や周辺状況から読み取れることが必要となります。

     そうなりますと、今後遺言書を作成する場合には、「もし遺産を残してあげたいと思う方が先に亡くなっていたらどうするか」という点に配慮した条項も考えないといけなくなります。

     昨年あたりからビジネス系雑誌を中心に遺言がブームになっていますが、次の改訂では間違いなくこの判決を反映する必要があるでしょう。

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    【研修】民事裁判における効果的な尋問
     どうもこんにちは。弁護士の村上匠です。
     昨日は、日弁連特別研修「民事裁判における効果的な尋問」を受講してきました。

     3時間半の長丁場にもかかわらず、一昨日の弁護士会照会よりも多くの受講者がいました。やはりみなさん、尋問技術には興味があるようです。

     ただ、通常の民事訴訟でも証人尋問まで進むケースはそれほど多くはなく、配付資料によると、民事第1審の訴訟の87.7%は人証がゼロだったそうです。
     また、証人尋問まで進む事件も、大半は書証(証拠となる書類)で大勢が決していることが多いとはよく耳にします。
     
     法科大学院によっては尋問技術の講義をするところもあると聞きますが、尋問技術は簡単に会得できるものではありません。さらに、訴訟の件数が減少している昨今、我々若手がOJTで技術を身につける機会も少なくなっています。このような研修の機会は貴重です。

     また、この研修では講師として東京地裁民事第5部の部総括判事をお招きしてました。裁判官の考え方、物の見方を知る良い機会だったと思います。


     研修の覚え書き。
    ・陳述書の記載は、記憶が明確か曖昧かを区別せよ。曖昧ならそれを正直に。リアルなので。
    ・本人だけで作成するより、弁護士が関与した陳述書の方が望ましい。整理されているので。
    ・目的無き質問をするな。
    ・主尋問は誘導せず、本人の言葉で語らせる。一言一句暗記してくるのは不自然。
    ・反対尋問は理由を語らせるな。主尋問を固めそうなら打ち切れ。
    ・事前準備が大事。時系列表、主張の対比表、証拠の整理、証人の記憶の喚起、リハーサル。
    ・おかしいと思ったらすぐ「異議」を出す。異議理由は後から考えてもいい。
    ・専門家証人は、本当に証人尋問する必要があるのか、書面尋問で足りる例が多い。
    ・なだいなだ『からみ学入門』(角川文庫)
    ・『民事事実認定と立証活動 第2巻』(判例タイムズ社) 
    【研修】弁護士会照会の実務
     どうもこんにちは。弁護士の村上匠です。
     昨晩は、日弁連特別研修「弁護士会照会の実務」を受講してきました。

     弁護士会照会とは、弁護士法に基づき認められた証拠収集手段で、公的機関や公私の団体に対し、回答義務のある問い合わせができるというものです。

     どのような場面で利用できるかというと、例えば
    ○ 違法駐車で困っているが、車の持ち主を特定したい。 →運輸支局長に対し、ナンバープレートから、所有者の氏名・住所を照会。
    ○ 悪質商法の被害を受けたが、相手の氏名・住所が分からない。手がかりは電話番号のみ。 →電話会社に対して、その電話番号の契約者を問い合わせる。
    ○ ボケちゃったおじいちゃんに成年後見審判を申し立てたいが、どの金融機関にいくら残高があるか調査したい。 →取引があったと思われる金融機関に預金の有無を照会する。
    などが挙げられます。


     研修の覚え書き。
    (総論)
     守秘義務の問題もあるので、回答をそのまま依頼者に渡さない。
     近年、個人情報保護法を盾に回答を拒否する例も報告されていますが、弁護士会照会は同法の例外規定に該当するので、その解釈は間違い。
     回答する相手方の負担を考えること。明確かつ限定的な照会をして、答えやすくする。事前に折衝して、不慣れな相手に回答の書き方をリードするのもよい。
     回答拒否をされても諦めず説得し、それでも回答拒否なら国賠ないし不法行為責任を追及する構えも。
    (各論)
     相続人の一人から金融機関に対する取引経過開示請求は、最判平成21年1月22日により、弁護士会照会によらない途が開けた。
     医療機関に対する照会では、本人の同意書は不要。
     携帯電話の会社への照会では、照会理由をあえて詳述しない。


     なお、仙台弁護士会の半澤力先生も、講師の一人として登壇されていました。
    2月14日から登記のオンライン申請手続き変更
     こんにちは、弁護士の村上匠です。

     以前にも、登記をオンラインで申請できるという話題をお伝えしましたが、今日、オンラインで登記を取ろうとしたところ、システムが変わっていることを知りました。
     そんな大事なことは、もっと周知してほしいと思いながらも、さっそく新しいシステムの使い方を勉強しています。
     仙台法務局も、2月14日より元の春日町に戻りましたが、やはり出かけなくて済む、手数料も安く済むというメリットには代えがたいものがあります。
    TPP参加で
     おはようございます。弁護士の村上匠です。
     
     日経ビジネスオンラインで連載中の、林總(はやし・あつむ)さんの連載小説『熱血!会計物語 ~社長、団達也が行くseason2』を毎週楽しみに読んでいます。
     
     第17話「TPPに参加したら公認会計士の世界も大きく塗り替えられる」では、わが国のTPP参加が、専門職の世界に及ぼす影響についての会話がありました。
     
     少し引用しますと、
     
    > 「TPPに参加したら、私たちの仕事にも影響が出ます」
    > 「そうでしょうね。医師、弁護士、公認会計士といった資格が、どの国でも認められることになる」
    > 
    > 「10年の猶予期間があるってことですが、遠からず専門職の世界が、大きく塗り替えられるに違いありません。米国公認会計士の資格を持つ人が、日本の公認会計士と同じ監査ができるようになるんですから」
     
    という会話が、自動車部品メーカーの社長である主人公と、公認会計士の間で交わされます。

     わが国の会計基準は、時価会計の導入などにより国際会計基準に対応させてきたので、なるほど、海外の会計士がわが国に流れ込むことも考えられるのかもしれません。病気や治療法も国によって変わらないでしょうから、医師の流入もありうるところです。
     
     では、海外の弁護士がわが国で活動するような時代が来るのでしょうか。外国と日本では法制度に相違があるので、影響があるとすれば、まず大手の渉外事務所あたりかなと思います。離婚調停、交通事故、自己破産、国選弁護などの街弁的な仕事は、採算性の観点からも外国人弁護士が手を伸ばすとは考えにくいかと(ただし裁判員裁判なら、陪審員制度のある国の弁護士だと、ものすごい弁論技術を見せてくれるかもしれないですね)。
     
     しかしながら、現在進行中の民法(債権法)改正の議論は、ウィーン売買条約という国際的な契約法に対応していると評されています。そうしますと、日本国内での契約が国際法のルールに準じてなされる時代が来るとも限らず、弁護士としても国際化が対岸の火事とはいえなくなるかもしれません。

     もう一つ、非常に考えさせられた会話を引用しておきます。
     
    > 「その逆もあるんですよ。それに、ボクたち経営者の立場から言えば、大歓迎ですよ。資格を持っているだけの人に、法律だからという理由だけでお金は払いたくないですからね。課題を解決してくれる本物のプロフェッショナルを必要としているんです。その人が、日本人であっても、マレーシア人であっても一向に構わないんですよ」
    東北新幹線の聖フランチェスコ
     こんにちは、弁護士の村上匠です。
     
     いわゆる三面記事のB級ニュースなのに、なぜか忘れられない事件があります。
     これは私が手がけた刑事事件という訳ではなく、ネット上で目にしただけのニュースなのですが、今年1月、東北新幹線の車内で全裸になった男性が、公然わいせつの容疑で逮捕されるという事件がありました。

     被疑者が述べた犯行の動機は、驚くべきものでした。決して露出狂の趣味があった訳ではなく、電車を乗り間違えた自分のふがいなさを腹立たしく思って、服を脱いだというのです。敷衍すると、自分が着ていた服は親が買ったものだから、捨てないといつまでも親から自立できないと思ったというのです。

     この動機、あなたは了解可能でしょうか?
     私がこのニュースを初めて見たときには、さっぱり分かりませんでした。

     しかし、最近ある新書を読み、ひょっとしたらこれが動機か、と思えるエピソードを知りました。

    イタリア 24の都市の物語 (光文社新書)イタリア 24の都市の物語 (光文社新書)
    (2010/12/16)
    池上英洋

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     時は12世紀から13世紀にかけてのイタリア。アッシジという町で、裕福な家に生まれたフランチェスコは、ある時、「どこへ行くのか」と問いかける不思議な声を聴きます。
     その瞬間から別人のようになった彼は、自分が持つ物をすべて貧者へと分け与え、自分の物がなくなってからは、実家にあった物を勝手に持ち出しては配り始めました。
     さすがに怒った父親から、今まで私がやったものを返せと言われた彼は、着ていた物をすべて脱ぎ捨て、父親に渡したというのです。
     後に彼は、各地を放浪しながら神の教えを広め続け、カトリックのフランシスコ修道会を創設し、聖フランチェスコと呼ばれるようになりました。

     親から買ってもらった服を、脱いで親へと返す。東北新幹線の彼と、まったく同じ発想です。
     中世イタリアと、現代日本の東北新幹線車内で、まさか(迷惑にも)同じ発想をしてしまう人がいるとは。

     ところで、東北新幹線の彼がどうなったのかは、続報がないため分かりません。わいせつの故意がなかった以上、公然わいせつ罪は成立しないと考えられます。そうすると、厳重注意を受けて家に帰されたかもしれません。
     実家の物を持ち出したりしてなければよいのですが。
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