刑弁やるならこれは買い!~『事例に学ぶ刑事弁護入門』
     積ん読解消企画、新年最初に紹介する本がこちら。

    事例に学ぶ刑事弁護入門―弁護方針完結の思考と実務事例に学ぶ刑事弁護入門―弁護方針完結の思考と実務
    (2012/10)
    宮村 啓太

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     タイトルに「入門」とつくので、おさらいのつもりで手に取りましたが、どうしてなかなか、新しい発見が次々と表われました。ステルスマーケティングと疑われるかもしれませんが、かなり良い本です。

    おすすめポイント。
    (1)類書にない記述が多い。
     まず、初回接見で持参するものに「白紙」を挙げています。これは、その場で被疑者に誓約書を書かせたり、自らが被疑者から聴き取った内容を手書きの供述録取書としてまとめるため必要とのこと。弁護士バッチや職印、委任契約書などは他のマニュアル本でもありましたが、白紙については使い方を含め案外盲点でした。

     ちなみに私自身も初回接見の持参アイテムにはこだわりがあって、「アラクネのカレンダー」(事件の経緯について記憶喚起や、終局処分までの見通しの説明に役立つ)、「執行猶予を付せるかの早見表」(聞かれたら確実に答えられるように)、「謝罪文の書き方」(某法律事務所のサイトにあったもの)などを用意しています。次回からは白紙も持参します。

     また、家族や職場の上司の身元引受書は、できれば定型文ではなく具体的なものにすべきなど、ともすれば形式さえ整えればいいという考えに陥りがちな点に釘を刺しています。本書を読みながら、ああ心当たりがあると反省。
     
     さらに、ありがちな弁護士倫理の問題にQ&A形式で一編を割いてあります。
     顧問先の会社から逮捕された従業員に接見してくれと頼まれたら何に気をつけるか。被疑者から毎日接見要請を受けたら、毎日行かないといけないのか。倫理研修のような設例に著者の見解が示されています。

    (2)書式が豊富。
     起訴前弁護から保釈や公判前整理まで、実践的な書式が豊富です。特に類型証拠開示請求書の書き方は、他書とは違い参考になりました。
     「ハードディスクに記録された民間の防犯ビデオ映像をどうやって保全するか」という設例では、第1回公判期日前の証拠保全請求書とそれに添付する写真撮影報告書まで載っています。ここまで丁寧に書式例を載せてもらえると、いつか自分でもやりたくなりますが、それは熱意ある刑事弁護人を増やしたい著者の狙いなのでしょうね。

    (3)値段が安い(2000円ポッキリ)。
     中身のない専門書でも3,4000円することも珍しくないのに、この情報量でこの価格に抑えてあるのは良心的。コストパフォーマンスが最高といえます。

     単に初心者向け書籍として位置づけるにはもったいない一冊。
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