修習生とともに裁判を振り返る
     今年の3月までやや大きめの国選刑事事件(頑張ったが結果はカスリもしない完封負け)を担当していたのですが、ある勉強熱心な修習生から話を聞きたいとのメールを頂戴しました。
     いわく、事件についてどのような弁護方針を取り、どのような考えで書面の内容や提出のタイミングなどを決めていたのか、弁護人の話を聞きたいとのこと。

     仙台地裁の刑事部で修習していた方がこの裁判を見ていたようで、生きた教材になるのならと、この申し出を快諾することにしました。
     もちろん、弁護士であれば修習生の頼みを断ることはありませんので(長きにわたる法曹界の伝統です。ただし、昨今は就職問題を除く)応じることは当然の務めなのですが、私自身も第三者の意見を交えて、弁護活動を再検討するいい機会だと考えました。
     
     以前書いたかもしれませんが、将棋や囲碁の世界では「感想戦」というものがあり、対局後に対戦者が互いの考え・読み筋を披露します。「ここではこうすれば良かったね」とか、「こう指したらどうするつもりだったの?」とか。勝った方もはしゃぐことなく、負けた方も悔しさをこらえながら、自らの技術向上のために一局を振り返ります。

     ただし、将棋や囲碁が完全情報ゲーム(お互いの手の内が分かる)であるのに対し、裁判は不完全情報ゲームなので、どうすれば正解だったかを正確に振り返ることはできません。
     すなわち、法律上、検察官が手持ちの証拠を全面開示する義務はないため、立証にマイナスになる証拠を出すことはありません。弁護側は、どのような捜査がなされ、検察官の手元にはどのような証拠があるかを推理しながら、弁護活動に当たらないといけません。また、裁判官がどう考えているかは判決まで分かりませんので、形勢に応じて活動内容を変えることも難しいところ。
     そうだとしても、中立的な第三者には自分の弁護活動がどのように見えていたのか、虚心坦懐に受けとめることは必ずプラスになるはずだと考えました。
     
     簡単なレジュメを作りながら自分の弁護活動を振り返り、また当日は修習生に疑問点をぶつけてもらいましたが、確かに100点満点とは言えなかった部分をいくつか発見でき、自分にとっても勉強の機会になりました。


     修習生の方の都合がつくなら、ぜひ第2回もお願いしたいと思っています。
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