場外戦術としてのプレスリリース
     先日、イギリスの空港で置き去りにされたとして、旅行者が旅行会社に対し、慰謝料など計40万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こしたというニュースがありました。

     ニュースを見てまず疑問に思ったのは、「仙台地裁に係属か、原告代理人は誰先生だろう?」という点と、「なぜ被告の旅行会社は40万円をケチったのだろう?」という点でした。

     おそらく提訴前に交渉の段階があったはずであり、そこで和解していれば訴訟に移行することもなく、この事件が世間に知れ渡ることもなかったはずです。
     この裁判がニュースになってしまったことにより、被告の旅行会社には「ツアー中に置き去りにされる会社」とのマイナスイメージがついてしまったわけで、和解金を支払うことで守られる信頼と40万円を天秤にかけてみれば、裁判で勝てる自信があったとしても、経営判断としては間違っています。

     もちろん、訴訟で旅行会社に非がないことが認められ、勝訴すればイメージの回復にはつながるでしょうが、判決が出るまでの期間はやはりマイナスイメージがつきまとい、その間に客が逃げることによる逸失利益は40万円を大きく超えるでしょう。
     こういう事件だと、訴えた段階で(原告が得をするかはともかく)被告は実質的な「負け」といえそうです。


     それにしても、こういう事件では原告代理人がプレスリリースをしているんでしょうね。
     私自身はマスコミ向けにプレスリリースをしたことはないのですが、かつて一度だけ、労働事件(労働者側)でやってみようか依頼者と相談したことはありました。私は何らかの団体とのつながりはないのですが、労働事件では法廷だけではなく法廷外の戦術も大事だという感覚を持っています。例えば組合の力とかで事件が左右される例も見聞きしたこともあります。

     私の事案も前記の旅行会社の事案同様、提訴したというニュース自体で被告の法人にブラックのイメージがつくであろうし、また特殊な売り手市場でその法人への就職希望者が減ることは間違いない事案でした(勿論ゆすりたかりをしたい訳ではなく、勝ち目のある事案でした。念のため)。

     結局、この事件は交渉の段階で依頼者が折れてしまい、もしマスコミ対応するならこうやって・・・という考えは現実化せず。弁護士が焚きつける訳にはいきませんから、おそらくそれでよかったのでしょう。
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