事件の筋の読み違え?
     遠方での出張相談を通じて受任した事件の話です。

     例によって事案をぼかしますが、依頼者が本来であれば受け取るべきお金を、第三者が勝手に受け取って使い果たしてしまったという相談です。その第三者からは最早回収の見込みがない。
     そこで、依頼者に特段の意思確認をすることもなく、第三者が受取人であると誤信して支払った方に責任があるとして、本来であれば受け取れるべきお金を再度請求する、という事件でした。

     真の受取人ではない者に対する支払い、しかも本人への意思確認なしというのですから、当然請求が立つと考え、法テラスの民事法律扶助(代理援助)を利用して、訴訟を起こそうとしました。

     ところが、法テラスから電話があり、勝訴の見込みがないので、扶助の申請を取下げろというのです。

     説明しますと、民事法律扶助(弁護士費用の立替え制度)を利用する要件には、収入が一定基準以下であることと、事件について「勝訴の見込みがないとはいえないこと」というのがあります。この要件に当てはまらない、すなわち、「勝訴の見込みはない」と言われたのです。

     私としては勝ち筋の事件だと見込んでいたので、勝訴の見込み0%とする法テラスの連絡には唖然としました。審査の担当者か私のどちらかが、「事件の筋読み」を大きく見誤っているバカ、たわけ者であることを意味するからです。

     依頼者と費用について相談しましたが、生活保護受給者であり、分割でも着手金を支払うことはできないとのことでした。訴訟にしたところで、満額回収でも100万円前後の事件です。
     「法テラスに弁護士費用を出してもらえないから」と言って、事件をお断りするのは簡単。

     しかし・・・

     仙台から遠くの県境に住んでいて、地元の弁護士にも多忙だからと断られ、ようやく法律相談で依頼可能な弁護士にアクセスできた方を無下にしていいのだろうか。

     「田舎者にも法の光を!」と日弁連執行部のスローガンが書かれた鉢巻きをした天使と、そろばんを持った悪魔が頭の上をぐるぐる。 
     ええい、ちくしょう。どちらもいなくなれ。

     結局、着手金は法テラス基準を下回る大特価、しかも支払い時期は事件終了時という特約付きで(ほとんど着手金の意味がない)、引き受けることとしました。ここで断ったら、自分の筋読みが誤っていたことを認め白旗を挙げることにつながるからです。お金ではなく、ただの意地です。

     そして数か月後。判決は、満額ではありませんでしたが勝訴。報酬はわずかでも、自分の筋読みが正しかったことを確認できたことは無上の喜びでした。依頼者の方からも感謝の言葉をいただきました。


     それにしても、なぜ勝訴の見込みがないとして法テラスに断られたのか。心当たりとしては、やはり生活保護受給者という点かなと思います。生活保護受給者の場合、立替えた弁護士費用の償還(返済)が免除されるため、法テラスは予算の都合上、なるべく水際で追い返したいという考えがあるのではないでしょうか。
     しかし、予算の都合と事件の筋読みは別物のはずであり、仮に審査の担当者に何らかの圧力がかかっていたとしたら。


     あ、また法テラス批判の話になってごめんなさいね。決して私は法テラスに対し敵愾心を燃やしている訳ではなく、おかしいものはおかしい、と言っているだけです。
     たまたま法テラスという組織に正すべき点を見つけることが多いだけで。
    関連記事
    Copyright © 匠の弁護. all rights reserved.
    Design by Pixel映画山脈