『2045年問題』
     今年最初に読んだ本がこれでした。
     たまには目先の事件のこととか、弁護士業界の未来とか視野の狭い話を離れ、こういう本も読んでおこうかと思い手に取りました。


    2045年問題 コンピュータが人類を超える日 (廣済堂新書)2045年問題 コンピュータが人類を超える日 (廣済堂新書)
    (2012/12/22)
    松田 卓也

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     そもそも「2045年問題」とは何かというと、驚異的なスピードで進化したコンピュータが、ついに人類の能力を超え、将来どうなるかが人類のアタマでは予想できなくなる時が来る、それが2045年であるという説のことです。

     1950~70年代ころに近未来の社会がどうなるかという予想はたくさんありましたが(昨年11月3日記事参照)、ついに未来がどうなるかの予測すらできなくなるそうです。

     筆者はSF映画の『2001年宇宙の旅』や『マトリックス』の未来世界を例に挙げ、これらは全くの絵空事ではないと説きます。
     生命が生まれたのが30~40億年前、人類が文明を持ち始めたのがわずか1万年前、産業革命は200年前、コンピュータができたのは60年前、インターネットが20年前。進歩のペースは加速度的に間隔が狭まっていき、ついに強い人工知能ができ、知的能力で全人類を上回るコンピュータが誕生する。そう予測する科学者がいるのです。
     ちょっと専門的な部分もあるので私も完全に理解はできていないのですが、大意としてはそういうところ。すぐ先の未来にどんな技術ができてどんな社会になるのか、読みながら思わずのけぞってしまうこと請け合い。 

     ちなみに、コンピュータにより弁護士が失業することも予想されています(171頁以下)。産業革命期、自動織物機械により多くの労働者が職を失い、今後、産業ロボットの導入によってブルーワーカーが職を失い、ついには知的労働者、オフィスワーカーも失業するというのです。

     ディスカバリー(情報開示)制度のあるアメリカでは、膨大な証拠書類を読むために弁護士の人手がかかるという問題がありますが、これをコンピュータに読ませて、事件に関係があるかを判断させ、証拠となりそうなものをピックアップさせ、それを人間の弁護士が読めば、必要な弁護士の数は減ることになります。

     筆者はアメリカの弁護士制度を想定して記述をしているため、普段の事件ではそれほど大量の証拠は扱わない日本の弁護士がどうなるかは書かれていません。
     しかし、私自身、日本の弁護士もいずれ職を失う日が来ることは十分あり得ると思います。

     昨年、コンピュータとプロ棋士が対決した第2回将棋電王戦では、コンピュータ側の3勝1敗1分けで終わり、将棋ファンに衝撃が走りました。
     将棋というゲームは、駒を得することと敵の王将を包囲するスピードとどちらを優先させるか、あるいは攻めと守りとどちらを優先させるかなどのバランス感覚が重要ですので、コンピュータがプロ棋士に勝つことは難しいのではないか。そういった評価が、数年前までは一般的だったと思います。
     しかし、今や将棋界ではコンピュータが人間と互角以上に渡り合っているという現実は否定できません。

     知的労働者の牙城は次々と崩されつつあります。

     この本で、私が一番衝撃を受けたのが最後の章です。

    「メドウズたちが計算したところ、驚くべきことに、人口ははじめの数十年はどんどん増加するのですが、21世紀のなかばにピークとなり、その後、激減するという結果が出ました。(中略)つまり、近代科学文明は崩壊して、再生しないという結論になったのです。」(本書200頁)

     『風の谷のナウシカ』のような、文明崩壊後の世界が来るのでしょうか。
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