スマホゲームの「ガチャ」と弁護士法23条照会
     ネット上のニュースで弁護士法の「23条照会」について触れられているのを目にして、どういう場面でのことだろうと興味を持つようになりました。
     どうやら、テレビのCMでやたらと見かけるスマホゲーム関連で、一種の消費者被害が生じているようです。

     正直、私自身はスマホゲームにあまり詳しくないので(昔、ガラケー時代に箱庭を育てるゲームはしたことがある)、以下の記述には不正確な点があるかと思いますが、私が表面的に把握した問題点と、それについて23条照会をするならこのような文面かな、という点をざっと書いてみます。

     まず前提事実として、
    ◆CMで見かけるゲームは、「原則無料」と謳っているが、実際には金を払った方が、有利なカードや希少価値のあるカードが入手できて、ゲームがより楽しくなる。このような有料プレーヤーのお金でゲーム会社がめちゃくちゃ儲けてバンバンと広告をやっている。
    ◆金を払ってカードを手に入れる方法として、駄菓子屋の外とかにあった硬貨を入れて玩具が出てくる「ガチャポン」のような仕組みがゲーム内にあり、無料の「ガチャ」よりも有料の「ガチャ」の方が良い物が出る確率が高いとされている。
    ◆しかし、当選確率は公表されておらず、欲しい物が出るまで金を払い続ける人がいて問題になっている。
    というところでしょうか。

     これだけですと、やや利用者の自業自得なところもあるかなという気もしますが、玩具のガチャとゲームのガチャの違いは、

    ◆前者は玩具などの現物を入手できる。
     後者はあくまでゲーム内でカードが手に入るのみで、ゲームが運営の都合で終了したらハイそれまで。「希少なカードの利用権」などは法的な保護に値するのかの議論がある。
    ◆前者は、ある程度お金をかければほぼ確実に目当てのものが入手できる。普通はガチャの箱も透けてるので、当たり商品の存在が確実に見えて、あと何回くらいで出るかの見当がつく。
     後者は、どんな確率で当たりが出るかは一般に公表されていない。さらに、運営側が当たり確率を恣意的に変動させる操作をしている可能性もある。(ブラックボックス状態)
     ネット上の検証記事では、「当選確率倍増キャンペーン」などと謳っている期間でも、それほど当選確率が変わらず、数万~数十万円の課金でも当たらないこともある模様。
    ◆後者では、いくらそのガチャに金をかけたか、ゲーム内で後から確認するすべがない。(最初にポイントを買って、それを複数のゲームで使った場合に、ある特定のゲームでの課金額を事後的に確認できない)

    ・・・となると、これはやはり野放しでいいのか、1等なんてどうせ当たらない宝くじでも当選本数は公表しているのにね、という疑問が生じます。
     極めて低い確率であるにもかかわらずそれを伏せ、「今なら当たりやすい」などと広告して利用者にお金を遣わせようとする行為が、景品表示法上の「優良誤認表示」に当たるとの指摘もうなずけるところがあります。ギャンブル類似の射幸心を煽り、中毒者を生み出すおそれがあるとなれば、やはり見過ごすことはできません。

     では、利用者が弁護士に依頼して、弁護士会を通じてゲーム会社に対して当選確率などの開示を求める23条照会をするとしたら、どのような文面になるでしょう。問題が新しすぎて、23条照会のマニュアル本にはまだ載ってないところです。

     私なら、たぶんこんな感じで書くかな。

    照会を必要とする理由

    (1)はじめに
     本件を端的にいうと、相手方が運営するゲーム内での有料のくじ引きについて、当選確率が極めて低いことを告知せず、「当選確率が今だけ●倍」などと不実の広告をした相手方に対し、不当利得返還請求をするため、依頼者の相手方に対するこれまでの課金額を照会するものである。(※景表法違反だけでは課金の取消ができないので、ここは民法上の詐欺取消か。不法行為構成だと過失相殺されてしまう可能性も高そう。)

    (2)当事者
     依頼者は、相手方が提供しているスマートフォン用ソーシャルRPG「G」というゲームのユーザーである。

    (3)ゲームに課金する仕組み (※こういう定型的な説明文のテンプレが必要だと思います。23条照会調査室の方々にも問題点を把握してもらわないといけない)
     上記ゲーム内においては、「ガチャ」と呼ばれるくじ引きのシステムにより、ユーザーに対し、ランダムでキャラクター(将棋の駒、トランプの手札のようなもの)が与えられる。このキャラクターは数百種類以上あり、それぞれにイラストや能力が割り振られている。
     前記ガチャには無料のものと有料のものがあり、有料のガチャでは能力が高いキャラクターや希少価値のあるキャラクターが出る確率が高いと、ゲーム内では説明されている。

    (4)依頼者の課金とその動機
     依頼者は、平成27年●月ころより、上記ゲームに課金して、有料ガチャを回したり、有料のアイテムを購入するようになった。
     その後、平成27年●月ころ、相手方は「××キャンペーン」と称し、「※上記対象期間内のみ、下記「新規キャラ」の出現率がアップしております。甲、乙、丙、丁(キャラ名)の出現率がアップします。」と前記ゲームの画面上に広告を表示させた。
     依頼者は、甲キャラの当選確率が通常よりも高くなり、せいぜい数千円から数万円程度の課金で甲キャラを取得できるものと誤信し、これを機に、有料ガチャによる甲キャラの獲得を目指してより高額の課金を始めた。その額は少なくとも50万円に上り、有料ガチャを回した回数は数百回に上ったものの、甲キャラが有料ガチャで当たることはなかった。
     また、依頼者がインターネット上で前記ゲームに関する書き込みを見たところ、依頼者同様に数十万円を使っても甲キャラが当たらなかったとの報告が散見された。
     よって、相手方は、景品表示法上の優良誤認表示を行ったものであり、また依頼者を含むユーザーに対し、数千円から数万円程度の課金で甲キャラが取得できるかのように欺罔し、これにより依頼者は当選の確率を誤信し、高額な課金を行ったものである。
     そこで、相手方に対し、詐欺に基づく課金の取消及び不当利得返還請求を行うべく、依頼者が相手方に対して支払った金額及びその支払い時期、上記キャンペーン期間中の有料ガチャにおける甲キャラの当選確率を特定する必要がある。
     よって、本照会に及ぶ。

    (あくまで架空のゲームについての話であり、実際に私がこのような相談を受けている訳ではありません)

    ・・・どんなものでしょうか。

     もし間違っている点があったら、こっそりメールで教えてください。こういう消費者被害の問題は、多数の力がないと改善の方向に動かないものです。
     また、もし上記の文面を参考にした同業者さんがいたら、camでぜひ首尾の報告をお願いします。
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