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    時限爆弾? 「相続意向確認書」なる文書が届いたら
     最近受けた法律相談で、この事例はぜひ紹介しておいた方がいいと思ったものがあったので、ブログに書いておこうと思います。

     【相談者】 6~70代の男性。
     【相談要旨】 先日、なんとか債権回収という会社から、「相続意向確認書」という書類と回答書が届いたのですが、どうしたらいいでしょう。振り込めサギかもしれないので、放っておいていいですか?


     怪しい郵便物というと、さすが最近の高齢者。まず振り込めサギの可能性を考えてくれました。たしかにそれも相当あるのですが、さて今回は。

     持参していただいた文書を読んでいくと、どうやら相談者の兄の●●さんが亡くなって、その子が相続放棄をし、直系尊属(両親、祖父母など家系図の上の方)はすべて亡くなっているので、兄弟のあなたが相続人になってますよ、ということらしい。
     弊社(実在する債権回収業者の名前でした)は、亡くなったお兄さんに対して約1000万円(正確には細かい金額まで記載)の債権を有しています。つきましては、相続を放棄するのかしないのか、意向をご回答願います、という内容でした。

     相談者に事情を伺うと、
     ・相談者は兄とは何十年と連絡を取り合っておらず、死んだのもこの手紙で知った。結婚して息子が1人いて、その後離婚したはず。先日亡くなったことは確認した。
     ・妹のところにも、同じような郵便が届いたらしいが、妹は不審に思い既に受取拒否をしている。

     さて、相談者にはどのように回答したらいいでしょうか。たまにはクイズにしますか。

     (1) こんな手紙は放っておけ
     (2) 必ず、「相続を放棄します」と回答書に書いて返送しなさい
     (3) そんなことよりも…


     
     正解は、(3) そんなことよりも… でした。

     そんなこと(相続意向確認書への回答)よりもやるべきことは、お兄さん(被相続人)の相続財産がどれくらいあるかの調査、あるいは一足飛びで、家庭裁判所に対する「相続放棄の申述」です。

     まず振り込めサギの可能性も検討しましたが、口座番号が書いてあって「いつまでに振り込め」とか、「ATMに行ってこちらに電話して操作手順を聞いて下さい」とかの怪しい記載はなかったので、9割方サギではなかろうと一応の判断をしました。

     その上で、この郵便が本物である場合、この郵便を受け取ってから3か月以内に何もしなかった場合、相続を承認したことになってしまう。つまり、兄(被相続人)の借金を相続することになってしまうのです。これが落とし穴、今回ブログに書こうと思った理由です。

     どうしてかというと、法律上は「自己のために相続があったことを知ったときから」3か月以内に相続放棄をしないと、原則として自動的に遺産を相続した扱いになります。
     ただし、この原則のままでは可哀想な場合もあるので(「故人にこんなたくさんの借金があるなんて知らなかったよ!」という場合など)、この3か月の期限を裁判例や実務ではより緩やかに解釈して、相続財産がないと信じていた場合や故人と縁がなく相続財産の状況も調べようもないような場合も、例外的に救済しようとしています。

     しかし、今回の手紙ではきちんと、「あなたが相続人になりました」ということ、「借金がいくらありますよ」、ということが知らされているので、この手紙を受け取った方が後になって「そんなこととは知らなかった」と言っても、たぶんダメ。裁判例や実務からすると、3か月経過後には相続放棄が認められる余地は相当低いと考えられます。仮に、家裁で形式的に相続放棄を受理してもらえても、債権者から「いや、それ無効。金返して」と訴えられると、負ける可能性が高いと思います。

     つまり、今回はとんでもない爆弾時限が送られてきたわけですね。放置をしたら3か月の経過で、ドーンと借金持ちになってしまう。手紙の受取拒否をした妹さんも、相談者から事情を聞いていれば3か月経過でアウトになる危険があります。

     なお、亡くなった兄(被相続人)の遺産に、トータルで借金を返せるくらいの預貯金・不動産があれば、相続を承認することも当然検討していいと思います。ですので、相続財産の調査をすることや、そのために3か月待ってくれ(「熟慮期間の伸長」という)と家裁で手続きすることも、答えとしては○です。ただし、第1順位の相続人であるお子さんが相続放棄を済ませていることから、資産と負債がトータルでマイナスなのだろうと思われたので、今回は一足飛びに相続放棄してしまっていいかなと考えました。

     なお、クイズの選択肢「(1) 放っておけ」がダメな理由は上記のとおり。
     「(2) 必ず、相続を放棄しますと回答書に書いて返送しなさい」も、これだけでは相続放棄をしたことにならず、必ず家裁に対して相続放棄の手続きをしないといけないので、アドバイスとしては不適。
     相続放棄を済ませた後に、家裁が発行する受理証明書の写しを債権者に送るというのなら、120点の回答です。

     ちなみに、私が第1順位の相続人から相続放棄のご依頼を受ける場合は、後順位の方の相続放棄はどうするのか意向を確認して、必ず後順位の方々にも連絡を入れておくか、または後順位の方からも一括で委任を受けるようにしています。放っておいたら、落とし穴方向に進んでいく人を放置するようで、いずい。

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