事件番号第1号を取った話
     これまでに何らかの形で裁判に関わったことのある方であれば、例えば「仙台地方裁判所 平成29年(ワ)第1234号」などの事件番号を目にしたことがあるかと思います。

     これは、裁判所が受け付けた事件ごとに番号を振っていくもので、かっこ書きの符合については(ワ)なら地方裁判所の第1審の民事訴訟、(わ) なら刑事事件で地裁の公判請求事件を指します。民事事件では片仮名でイロハニ・・・で、刑事事件では平仮名です。
     番号の数字は裁判所の受付日時順に振られていきますので、弁護士が(ワ)第1号とか(ヨ)第1号(ヨは地裁の保全事件)とかの番号を見たりすると、「おっ、正月早々に裁判所に提出ですか。お忙しいことで何よりですなあ(やっかみ半分)」などと思うわけです。

     私なんぞはそこまで急ぎの事件を年末年始に持ち込まれた経験はないので、これまで第1号という番号を取った経験がなかったのですが、つい先日その機会がありました。

     といっても、今年の第1号ではなく、昨年12月。平成28年(よ)第1号という事件番号です。

     さて、(よ)って何の事件だと思いますか?

     (よ)は、刑事事件での証拠保全請求事件に振られる符号のことです。

     これがどういう物かというと、刑事事件で第1回の公判期日より前に証拠を保全しておかないとその証拠を使えなくなるような事情がある場合、裁判官に対して押収、捜索、検証や証人尋問、鑑定を請求できるという制度があるのです(刑事訴訟法179条1項)。
     これを私が昨年12月に請求したところ、なんとその年は一度もこの制度が使われておらず、私が第1号に。

     この制度が使われる場面として想定されるのは、例えば重要なアリバイ証人が近々に長期出国する予定があり、裁判が始まった後には裁判に呼べないので予め証人尋問をするとか、警察官に虚偽自白を迫られた被疑者がボコボコにされたので傷跡の写真を撮っておきたいとかのケースです。後者のケースなんかは、弁護人による接見室内の写真撮影をNGとする判例を裁判所が出したので、その代わり今後は裁判所が積極的に証拠保全を実施してくれるはずだと思います。

     なぜこんなにもこの制度が使われていないのか気になって調べてみたのですが、一般的に上記のような事例では民事訴訟法234条以下による証拠保全の手続きの方が利用されていて、こちらの制度で取得した証拠を刑事事件にも使う、というやり方が取られることが多いみたいですね。刑事訴訟法の証拠保全だと、事前に捜査機関に対応の準備をさせる時間的余裕を与えてしまうというデメリットがありますが、民事訴訟法ではそれがないという点で有利なようです(大阪弁護士会刑事弁護委員会編『捜査弁護の実務』参照。この本は書式も充実していて便利。ちなみに大阪では捕まる方も捕まえる方もいろいろとアレなので、大阪弁護士会は刑事弁護のノウハウに長けているのではないかという偏見を持っています)。

     ただ、私の案件では国賠などの民事訴訟を提起することが想定し難いケースだったので、やはり刑事訴訟法の証拠保全によらざるを得ないものでした。

     当日は警察署まで裁判官と書記官にご足労いただいて、普段は弁護人が入れない留置管理課の奥の方に通されるなど、なかなか珍しい経験をしました。たぶん、裁判所と警察署の方にとっても珍しいことだったのかなと思います。

     まあ、私選事件だったから普段やらない手段もやってみたという側面は否定しませんが(ゴホゴホ)
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