書面によらない遺言は無効。しかし・・・(大阪高裁H22.10.21判決)
     弁護士の村上匠です。

     死亡が危急に迫った例外的な場合を除き、書面によらない遺言は無効とされることは、ほとんどの方がご存じだと思います。
     そのため、遺言書がなければ、故人が生前「俺が死んだらこの家は長男のお前にやる」と毎日言っていたとしても、法定相続分に従って遺産分割をしないといけません。

     では、故人が生前に話していたことは、まったく何の効力も生じないのでしょうか。
     大阪高裁H22.10.21判決(判例時報2108号72頁)のケースをご紹介します。

     内縁の夫A男は、約40年間内縁関係にあったY女とともに、A男所有の建物で長年同居していました。
     生前A男は、X子を自宅に呼び出し、同行したX子の夫や親戚の前で、こんなことを言っています。自分(A男)にもしものことがあったら、Y女に本件建物をやり、そこに死ぬまで住まわせて、1500万円を渡してほしいと。
     その後、A男が亡くなり、A男のたった一人の相続人X子がこの建物を相続しました。内縁の妻Y女には相続分がありません。遺言を残せばよかったのですが。
     X子は、Y女を相手取り、建物の明渡しなどを求める訴訟を起こしました。(たぶん、ドロドロした人間関係があったのでしょうが、そこには立ち入りません)

     Y女が本件建物に住み続けるには、法律上、何らかの占有権原(なおここでは「権限」ではなく「権原」が正しい用語)が必要です。しかし、当然のことですが、Y女は夫A男との間に、建物を借りる契約書を交わしたりはしていません。
     そうすると、故人の意思に反し、Y子は家を明け渡さないといけないことになりそうです。

     ところが、この判決ではX子の請求は棄却されました。その理由は、A男の上記発言などから、黙示的に、Y女が死亡するまで本件建物を無償で使用させる貸借契約が成立していたというものでした。

     遺言書はないものの、故人の意思を尊重する結論となったという判例でした。 
     しかし、A男がキチンと遺言書を作っていればこのような裁判沙汰は避けられたはずです。特に内縁関係の場合は相続分がないのですから、遺言書で手当てをしておくべきだったといえるでしょう。
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